SPORTS TOPICS めざせ自転車の聖地! 日本サイクルスポーツセンター・佐藤さんに聞く 「伊豆ベロドローム観戦ガイド」 2016.1.22

ベロドローム外観

伊豆ベロドローム(写真提供:日本サイクルスポーツセンター)

 

2020年の東京オリンピックで自転車トラック競技の会場に決まり、注目を集めている「伊豆ベロドローム」。さまざまな“おもしろ自転車”に乗れることでもお馴染みの「サイクルスポーツセンター」(静岡県伊豆市)内にあり、日本で唯一の木製トラック(走路)を備えた美しい屋内競技場です。

今は日本でも自転車愛好家が増えていますが、そのほとんどはロード系。競輪のように周回コースを走る「トラック競技」は未知の世界という人も多いのではないでしょうか? そこで今回は、トラック競技の魅力や伊豆ベロドロームでの楽しみ方について、日本サイクルスポーツセンターの佐藤和広さんに聞いてみました。

佐藤さん

今回お話をうかがった「一般財団法人 日本サイクルスポーツセンター」競技振興部の佐藤和広次長。穏やかな語り口の中にも、自転車に対する愛情の深さや熱意が伝わってくる。

 

【伊豆ベロドロームのここがスゴイ!】

 

というわけで、まずは「伊豆ベロドローム」とはどんな施設なのか、佐藤さんに語っていただきます。

 

1.日本で唯一! 国際規格の屋内木製250mトラック

「今、国際的な自転車のトラックレースは、屋内でスピードの出やすい木製トラックで行なうのが基本になっています。しかも、小さいトラックをクルクル回るほうが観ていて楽しいということで、1周250mという短い走路が主流。現在では、オリンピックやエリートクラスの世界大会で使うトラックは、1周250mと規定されています。ところが、日本にはその基準を満たす屋内競技場はありませんでした。それも日本が勝てない原因のひとつではないかということで、国内にもぜひ作らなければいけないという動きが出てきました。そして、いろいろな候補地があった中で最終的にサイクルスポーツセンターの敷地内に作られることになりました」

そうした経緯で、2011年(平成23年)10月1日に誕生したのが「伊豆ベロドローム」。つまり、現時点でオリンピックのトラック競技が開催できる国内唯一の施設ということで、今回の伊豆での開催する案があがったわけです。

トラック

国際規格に基づいた250mの木製(シベリア松)トラック。オリンピックや世界選手権が開催できる日本で唯一の施設だ。(写真提供:日本サイクルスポーツセンター)

 

2.バンクの最大傾斜角=45度!

「トラック競技では一流選手だと時速70kmぐらいのスピードが出ます。そのスピードで安定してカーブを曲がるには、かなりのバンク(傾斜)角度が必要なんです。国際的な競技トラックの規定では『85kmでも安定してコーナーを回れるように設計する』と書いてあり、それを満たすためにバンクの最も角度がきつい部分では45度にもなっています」

「45度」と聞いてもどの程度かイメージできないかもしれませんが、実際にそのバンク下に立ってみると、とんでもない角度です。斜面を這って登ることも、立つこともできません。「こんなところをよく自転車で走れるな」と思うような角度です。

バンクの角度

もっとも角度が急なバンク部では、このぐらい自転車を寝かせて走ることになる。かなりスピードを出さないとずり落ちでしまう角度で、「オートバイで走るのもかなり恐いです」と佐藤さん。

 

3.コースと観客席が超近い!

「最前列の席ですと手すりの先がすぐコースなので、手を伸ばしたら選手に当たってしまうぐらいの近さで観戦することができます。タイヤの音もよく聞こえますし、選手が通るときの風を感じることもできます。だから本当に一流選手のすごいスピード感や迫力を体感できますよ」

観客席

観客席とコースの近さも伊豆ベロドロームの魅力のひとつ。選手たちが起こす風や音も間近で体感することができる。

 

4.どの席でもコース全体がよく見える!

「1カ所から反対側までしっかり見えるのも、250mのトラックの良いところです。ですからレース展開もわかりやすく、選手同士の駆け引きがわかってくると、より楽しくなると思います」

 

【トラック競技の醍醐味と楽しみ方】

次に、そんな伊豆ベロドロームで行なわれる自転車トラック競技の魅力について教えてもらいました。

「まず人間が自分の力で出せるスピードという意味では、最速の競技だということです。また、ロードレースは目の前を通過してしまったら終わりですが、トラックレースは選手たちをずっと観ていられます。スケートのショートトラックと同じように、抜きつ抜かれつの展開や駆け引き、コーナーを回るうまさなども見どころですね。それと陸上競技と同じように、いろいろな種類の種目があって、チーム戦もあります」(佐藤さん)

人類最速の競技を、陸上競技よりも見やすい会場で、選手が起こす風や音を感じながら見ることができる。なかなか贅沢なことですよね。

 

トラック競技の種目

というわけで、どんな種目があるかというのは、日本自転車競技連盟(JCF)のサイトを見ていただけると詳しく解説されています。オリンピックでは、そのうちスプリント、ケイリン、チームスプリント、チームパーシュート、オムニアムの5種類が行なわれています。

 

空気抵抗との戦いや駆け引きに注目

「屋内競技場では風の影響はないですが、スピードが速い分、空気抵抗はかなり大きく影響します。先頭を走っているのと、その後について風圧を減らして走るのでは、消耗度がまったく違います。だから、レース中のポジション争いが結果にも大きく影響しますし、大きな見どころになります」

先頭を走っている時間が長いと、足が疲れて最後の勝負で不利になりますが、あまりに後ろについていると逆転も難しい。その中でいかに良い位置をとるのか、空気抵抗の影響が大きい自転車ならではの見どころです。

レースのかけひき

前の選手を追い抜くには外側から行かなければならないというルールがあり、フィニッシュ直前のスプリントに入る前にも、緻密なポジション争いの駆け引きが行なわれている。(写真提供:日本サイクルスポーツセンター)

 

筋肉の限界へのチャレンジ

「距離が短い種目、たとえばタイムトライアルでは、男子は1km、女子は500mを単独で走りますが、1kmだと足の筋肉に乳酸がものすごくたまります。ゴール直後はまともに歩けなくなるぐらい足がパンパンになる選手が多く、本当に過酷ですね。その他の種目でも、最後は足の限界までスプリントするので、肉体の限界との戦いという一面もあります」

選手の足がどれだけパンパンになっているかというのは、見た目にはわかりませんが、フィニッシュ後の表情や歩き方なども見どころかもしれません。

 

ルールがわかるとより楽しくなる

「たとえば『ポイントレース』では、10周に1回ずつその時点での順位によってポイントが与えられ、その合計点によって最終順位が決まります。だから、最後に1着でゴールしても1位になるとは限りません。ただ、場内アナウンスで毎回どの選手が何点取ったか教えてくれるので、少しだけ予備知識があれば、意味はわかると思います」

ポイントレースは40km(160周)という長丁場ですが、これなら飽きることはなさそうですね。

また、「ケイリン」では、フィニッシュ前600~700mまでペースメーカーが先頭を走って選手たちの空気抵抗を軽減し、ラスト1周でものすごい競争がくり広げられます。ペースメーカーが離れる前にベストポジションを確保するための駆け引きも非常に激しく、そこも大きな見どころです。

 

まずは、ぜひ一度伊豆ベロドロームへ!

「今は60歳や70歳以上の方でも自転車を楽しんでらっしゃいますし、休日にいろいろな所を走っている人が非常に多く、生涯スポーツとして定着しつつあります。そういう中で、健康スポーツとして楽しんでいる方にも、観るスポーツとしての自転車競技の楽しみ方を知ってほしいと思っています。ご自身が乗っている方だと、一度観れば選手たちのすごさを実感していただけると思いますし、ぜひ一度ベロドロームでトラック競技を体験してほしいと思います」

1月26日(火)から30日(土)まで「アジア自転車競技選手権大会」が伊豆ベロドロームで開催されます。ハイレベルな競技を間近で観戦できるチャンスです。ぜひ一度観戦に訪れてみてはいかがでしょうか。

ベロドローム内観

伊豆ベロドロームの内部。どの席からでもトラック全体が見渡せるが、やはりゴール近くの最前列がオススメとのこと。アジア選手権はすべて自由席なので、早い者勝ちだ。

 

【自転車の聖地、静岡県とサイクルスポーツセンター】

静岡県は、海あり山あり、平地あり、湖あり、絶景あり…と自転車で走るのに適した場所がいっぱい。川勝知事も「(自転車の)日本のメッカにしたい」と語っていて、自転車の普及・強化にとても力を入れています。

そんな静岡県の中でも“自転車の聖地”と言えるのが、「自転車の国 サイクルスポーツセンター」。ベロドロームも含めて距離の異なる4つのトラックを有する他、ロード用の5kmサーキット、マウンテンバイクコース、BMXコース、ファミリーサーキット、ストライダーパークなど盛りだくさん。さらに、おもしろ自転車や巨大ジャングルジム、夏はプールといった数々のアトラクションまで備えていて、家族全員で丸1日楽しめます。

おもしろ自転車

さまざまな変わり種自転車に乗れる「おもしろ自転車」のアトラクション。サイクルスポーツセンターといえば、これを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。(写真提供:日本サイクルスポーツセンター)

 

ここで自転車の魅力を知った子どもたちが、やがて競技にも憧れ、ベロドロームで実力を磨き、世界の舞台へと羽ばたいていく。それが、佐藤さんをはじめとする関係者の夢になっているようです。

マウンテンバイク

サイクルスポーツセンターには、BMXの練習や大会ができる本格的なコースもある。オリンピックの4競技(トラック、ロード、マウンテンバイク、BMX)のコースを全て備えているという意味でも国内唯一の施設だ。(写真提供:日本サイクルスポーツセンター)

 

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